金沢市「養サポ」事業 立案担当者のつぶやき③誰が支援(助成)を受けられるか(1) 所得制限の全面撤廃

2024年05月08日

金沢市養育費確保サポート(養サポ)の支援・助成は、少なくとも、以下の方々が利用できる。

(いずれもand要件。全てを満たす必要がある)

1 市内に居住している、ひとり親 or 離婚を検討している親
2 高校生以下の子(18歳になった後最初の3月31日までの子)を扶養する(扶養しようとしている)親(※1)
3 過去に養サポの助成を受けたことがない親(もっとも、同時にまたは別の機会に、項目が異なる助成をそれぞれ受けることは当然可能である。例えば、実費(公証役場、家庭裁判所に納める費用)と弁護士着手金・報酬金等)

眺めてみても「まあ当然かな」という風に見えてしまうかもしれないが、まず重要なのは、上記以外には、助成を受けられる主体についての要件がないということである。

つまり、所得制限がない

目下のところ、養育費の受取率・受取額を向上させるために、積極的に取組みを行っている自治体が広がりつつある状況であるが、現実には、前年度の親の所得が一定額以下であること(典型例は、児童扶養手当を受給しているか受給できるレベルの所得であること)を要件としている自治体が多い(※2)。

金沢市も昨年度まではこうした所得制限を設けていた。

しかし、金沢市は本年度から所得制限を全面的に撤廃した

確かに、子またはひとり親家庭の貧困への対処という(広い)課題設定をするのであれば、親の所得制限を設けることには一定の合理性があるだろう。しかし、別居親が同居親に支払わなければならない養育費を子に行き渡らせるという課題を端的に設定し、その解決に向けて自治体が取り組むのであれば、本来、親の収入は全く無関係であるか、あったとしても関係は極めて薄いはずである。

金沢市は、問題をそのように捉えて(捉え直して)、所得制限の撤廃という英断をした。

やや横道に逸れるが、ついでに言うと、法テラス事件(※3)を助成の対象外としている自治体が少なくない中、金沢市は、法テラス事件も通常事件と同様に助成対象とし、実費や弁護士着手金・報酬金等の助成を行っている。

こうした点も含め、金沢市養サポは誰にとっても利用しやすい開かれた制度となっている。


※1 「扶養」には、現実に監護養育していることのほか、養育費の支払いを行うことを含む

※2  2024年3月29日 こども家庭庁支援局家庭福祉課「養育費の履行確保等に関する取組事例集」等

※3 収入及び資産が一定額以下であること等の要件を満たした場合、法テラスが定める比較的低廉な費用で弁護士に事件を依頼することができ、かつ費用の長期分割払いも認められる事件